イライラ感や不眠に効果あり!漢方・抑肝散(よくかんさん)の効果と副作用

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21 世紀の家庭の医学「いしゃまち」に下記の記事を投稿しました。

イライラ感や不眠に効果あり!漢方・抑肝散(よくかんさん)の効果と副作用

漢方薬というとみなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。一般的な医薬品とは違い、すぐには効果がでないが飲み続けることで体質改善が期待される、または反対に漢方って成分もよくわからないし本当に効くのかな?というイメージもあるかと思います。風邪症状に効果があるといわれる葛根湯(かっこんとう)や小柴胡湯(しょうさいことう)は、みなさんも耳にされたことがあるでしょう。

今回は、現代人には付き物のストレスからくる身体の不調や、認知症の諸症状にも効果が期待されている抑肝散(よくかんさん)の効果や副作用についてお伝えします。

抑肝散って何が入っているの?

抑肝散は、次の7種類の生薬からできています。

  • トウキ(当帰:血行をよくする)
  • チョウトウコウ(釣藤鈎:脳循環をよくする)
  • センキュウ(川きゅう:血行をよくする)
  • ビャクジュツ(白朮:余分な水分を取り去る)
  • ブクリョウ(茯苓:尿の出をよくして水分の循環を促す)
  • サイコ(柴胡:炎症を抑え筋緊張をゆるめる)
  • カンゾウ(甘草:緩和作用)

メーカーにより同じ「抑肝散」でも、原料となる植物の種類が異なる場合もあります。効果に大きな違いがあるわけではありませんが、抑肝散は体質があえば早い効果が期待される漢方薬のひとつだともいわれています。

漢方はなぜ効果があるのか分かっていないのではないかという疑問をお持ちの方もいらっしゃいますが、漢方で使用される植物に含まれる有効成分の多くには科学的な裏付けがあります。抑肝散でいうと、主にセロトニン(精神を落ち着かせる成分)が効果の中心とされ、この成分は釣藤鈎(ちゅうとうこう)に含まれる成分です。

また、グルタミン酸を抑制することで攻撃性を抑制するともいわれています。「肝」は漢方では肝臓だけでなく、心や精神をも表します。「肝を抑える=抑肝」とは、期待される効果の通りの名称だともいえますね。

抑肝散の味は甘いといわれているものの、飲みにくい場合は、漢方服用をスムーズにしてくれるゼリー状の補助食品を服用の際に試してみるのもおすすめです。

抑肝散の効果って?どんな人に効果があるの?

<子供の症状に>

本来、抑肝散は甘みがあり、小児夜泣き、小児疳症(しょうにかんしょう:昔でいう「かんの虫」。小児の神経症のことでかんしゃくを起こしたり、なかなか眠らず興奮しすぎたり行動が荒っぽいといった症状)にも使用されてきました。子どもの症状に使用されてきたことから、大人にも安全で副作用のリスクが小さい漢方として使用されてきました。

虚弱な体質で神経が高ぶりやすい方に向いているといわれており、現代人であればだれしも経験したことがある不眠症やいらいら、不安、緊張等の神経症状に適応されています。

<認知症の周辺症状に>

最近では高齢化社会に伴い増加傾向にある認知症の周辺症状にも有効だといわれています。認知症は、記憶力・思考能力の低下に伴う無気力・無関心、妄想や幻覚・不安などの周辺症状を伴います。これらの症状に対して、一般的に精神に作用する薬を処方してしまうと、高齢者の方には効果が強くでることで転倒などのリスクが生じます。

一方、抑肝散は日常の動きを低下させることなく、周辺症状を改善するという治療効果が報告されています。このことは、介護するご家族や医療従事者の負担を軽減することにもつながります。

副作用はあるの?

漢方というと一般的な医薬品に比べて副作用が少ないイメージがあるかと思います。しかし、医薬品である以上、副作用が生じる可能性は十分あります。

抑肝散に報告されている副作用のうち重大なものは間質性肺炎といって発熱や咳、呼吸困難を伴う肺炎です。また、偽アルドステロン症といって体内のミネラルバランスが崩れ血圧異常やむくみ、筋肉のけいれんなどの症状が出ることもあります。いずれも頻度は不明ですが異常がでた場合はすぐに服用を中止し、病院を受診してください。

また、抑肝散だけでなく別の種類の漢方、または病院でもらっているお薬と併用される方もおられると思います。漢方薬の併用では漢方に多く含まれる甘草(かんぞう)などの成分が重なったり、血圧の薬で利尿成分が配合されていたりする場合は作用が強くでることがあります。飲み合わせについても医師・薬剤師にしっかり確認しましょう。

また、胃腸の弱い方、高齢の方は、食欲不振や吐き気、下痢などの胃腸症状が出やすいので様子をみながら慎重に使用しましょう。

その他にも可能性は非常に低いといわれていますが、心不全横紋筋融解症(筋肉痛やしびれなどの症状)や肝障害も報告されています。漢方薬は一般市販薬としてドラッグストアでも容易に手に入れることができます。漢方は植物由来だから大丈夫だろうと安易に自己判断で使用せず、必ず薬剤師や医師に相談しましょう。

漢方ってどうやって取り入れたらいいの?

漢方専門の薬局では患者さんの話を聞き取り、その方にあったお薬を乾燥した植物葉っぱなどから調合していくことがあります。効果は期待できますが、薬を自宅で煎じることになり少し敷居が高いかもしれません。一方、ドラッグストアや病院で処方されて手に入る漢方薬はエキス顆粒の形態です。

飲み方は、吸収をよくするため食前や食間(食事と食事の間)にお湯や水と一緒に服用するのが一般的です。病院で薬をもらうほどではないけど最近ストレスでイライラするなぁ、というときは抑肝散を試してみるのもいいかもしれません。

そのまま飲むことに抵抗があれば、薬膳料理のように料理に使ってみるのもいいでしょう。本来は成分の吸収をよくするために服用は食間(食事と食事のあいだの時間帯)となっており、空腹時で服用することが望ましいとされていますが、胃腸が荒れやすい方などは食後でも構いません。

まとめ

一般の薬に比べてドラッグストアなどでも自分の判断で入手しやすい漢方薬ですが、様々な注意点があることをご理解いただけましたでしょうか。市販で手に入る抑肝散は多くが第二類医薬品といって薬剤師でなくても登録販売者の資格を持った販売員から説明を受けて購入することができます。正しい知識を持って安全に使用するために、医師や薬剤師など専門家に相談しながら有効に活用してみてはいかがでしょうか。

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